約款 民法 改正。 【連載】債権法改正と金融実務〜定型約款をどこよりも詳しく解説

【第101回】2020年の民法改正。工務店への影響と気をつけるポイントとは?

約款 民法 改正

契約書と約款の違いは? 契約書と約款は、どちらも同じように取引の内容を説明する文書ですが、どのように違うのでしょうか。 契約書とは 契約書とは、当事者同士が話し合いで決めたことをいつでも確認できるように、契約内容を文書として記したものです。 契約自体は口約束でも有効ですが、後々言った言わないというトラブルを避けるために、証拠として文書に記しておきます。 もし何らかのトラブルが生じたときは、この契約書は裁判においても有効な法的証拠として扱われます。 そのため、取引において非常に大切な文書といえるでしょう。 定型約款とは インターネットの普及により、証券取引や保険、旅行、通信販売など不特定多数の人との取引が増えてきています。 このような取引では、契約ごとに契約内容を細かく記すことは事務的に無理があるでしょう。 そのため企業は、大量の契約を効率的に処理するため、あらかじめ条件を細かく定めた約款を作成し、個々の取引に利用します。 このように、不特定多数の人を相手方として取引をする場合、ある条件のもとで行われる取引を定型取引といいます。 定型約款とは、定型取引における画一的な条項です。 契約書と定型約款の具体的な違いとは 先述したとおり、定型約款は不特定多数を相手方として作成された画一的な条項です。 これに対して契約書は、特定の当事者との契約に関するものであり、代金の支払い日や金額など具体的な内容が記されているものです。 民法改正による約款の定義は? 2020年4月に民法が大きく改正されますが、曖昧だった約款に関してこれまでのルールが改められました。 定型約款は不特定多数要件を満たす 定型約款のいちばんの特徴は、不特定多数の人が対象となる点です。 例えば保険約款や宿泊約款などのように、取引の対象が、特定の個人ではない場合に要件を満たすこととなります。 定型約款は画一性要件を満たす 定型約款の画一性要件とは、次の2つを満たす必要があります。 ・不特定多数の相手方に対して同じ内容の条件で契約を結ぶこと ・契約の内容が社会的に鑑みても合理的であること 画一性要件においては、内容のある部分が画一的である場合、相手方にとって内容が合理的であれば要件を満たすこともあります。 一例ですが、ある企業が一般のコンピューターを購入する場合、コンピューター会社が事前に作成した定型約款は画一性要件を満たします。 なぜならコンピューター購入にあたって、企業とコンピューター会社との間で交渉が行われる訳ではないからです。 一方、例えばある企業が、商品の原材料を多くの企業と取引している場合、企業がその商品に関して作成した文書は画一的でしょう。 しかし、取引のなかで定型約款が使用されている場合でも、交渉により内容はそれぞれ異なることが予想されます。 このような取引では、要件を満たすとはいえません。 定型約款は目的要件を満たす 目的要件とは、定型約款を契約内容に組み入れることを目的とすることです。 つまり、何かしらの契約書を作成するにあたって、企業で使われているテンプレートの内容に関して話し合いや交渉が予想される場合は、これらのテンプレートはこの要件を満たさないと考えられます。 どのような種類の契約書が適用される? 次のような契約書が、適用となるでしょう。 ・預金規定 ・証券総合サービス約款 ・消費者ローン契約書 ・保険約款 ・旅客運送約款 ・宿泊約款 ・ソフトウェアライセンス規約 ・インターネットサイト利用規約 今まで、約款に関しては曖昧な部分も多く、利用する人にとって不利益な内容が記されていても規定はありませんでした。 新しく法律が改正されたことで、ルールが明確になり、より安心して取引が行えるようになります。 3 契約書と約款の違いを正しく把握しよう 契約書と約款の大きな違いは、契約の相手方が不特定多数なのか、それとも特定の個人なのなのかという点でしょう。 定型約款は、企業にとっても契約する相手方にとっても作業の効率化が図られ大変便利なものですが、用いる場合は注意が必要です。 電子契約書も、この定型約款の規定対象となっています。 今後は、電子契約書が増えることが予想されますが、民法の改正により、一層安心して利用できるようになるといえるでしょう。

次の

民間連合協定工事請負契約約款等が改正されます

約款 民法 改正

民法548条の2(定型約款の合意)• 民法548条の3(定型約款の内容の表示)• 民法548条の4(定型約款の変更) 定型約款という用語が登場した経緯 定型約款という用語は、債権法改正前から使われてきた「約款」という用語と区別するために、法制審議会での議論の終盤に登場した用語である。 従来から使われてきた「約款」については、「多数の契約に用いるためにあらかじめ定式化された契約条項」という共通理解があり、保険約款、運送約款、預金規定のように、約款であることが疑問視されないものがある一方で、「約款」の外延については、論者によっても文脈によっても異なっていた(1頁・中田裕康「約款の定義」参照)。 法制審議会での議論が始まった時点では、「約款」についてルールを設けることが目的とされていた。 しかし、経済界を中心に、「約款」という用語の示す範囲が曖昧であり、上記の約款取引の特徴が当てはまらないものも規制対象になってしまう等の懸念が示されたことを受け、規制対象を定義しその範囲を明確化することになった。 第30・1では、規制対象である「約款」を「多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的として使用するもの」と定義したが、約款という用語そのものに対する反発もあったことから、別の用語を用いることとされ、最終的に、定型約款という用語が登場した(・37頁)。 定型約款の意義 従来の「約款」という用語とは区別される、定型約款の意義は、民法548条の2第1項に定められている。 定型取引の典型例として想定されているのは、「多数の人々にとって生活上有用性のある財やサービスが平等な基準で提供される取引や、提供される財やサービスの性質や取引態様から、多数の相手方に対して同一の内容で契約を締結することがビジネスモデルとして要請される取引」である(・10頁、・15頁) a 「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引」の要件は、「不特定多数の者を相手方として行う」という表現により、相手方の個性に着目する取引を定型取引から除外することを目的として設けられた(・1頁、・1頁松尾関係官の発言)。 その前提として、定型約款の規制対象が「契約内容を画一化することについて相手方も何らかの利益を直接間接に享受していると客観的に評価することができるようなもの」であり、「相手方の個性に着目することなく行われる取引であることが必要」とされている(における小川政府参考人の答弁)。 b 「その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」の要件は、事業者間取引における契約書ひな形を規制対象から除外することを目的として設けられた。 かなりの変遷(第30・1および・365頁、・9~10頁、・15頁、・16頁、・37頁)、があったが、「契約書のひな形」が定型約款に当たらないことは、国会答弁でも確認されている(における小川政府参考人の答弁)。 画一的であることにより、契約コストが下がり、相手方も利益を享受できるという関係がある場合にこの要件を満たすことになる。 一般論としては、画一的であることにより、契約コストが下がり、相手方も利益を享受できるという関係がある場合に、 b の要件を満たすことになるが、その判断は容易ではない。 国会において、銀行取引約定書は、個別に交渉して修正されることもあり、その意味では、画一的であることが合理的であるとは言いがたいとされる一方で、住宅ローン契約書・消費者ローン契約書が定型約款に該当するとされたこと(における小川政府参考人の答弁)等を参考に検討することになるだろう。 なお、「取引の内容の全部又は一部」とされているのは、全部が画一的でなければ定型約款に該当しないという解釈を排除する趣旨であり(・38頁)、「重要な部分が画一的であるという意味」である(における小川政府参考人の答弁)。 従って、ごく一部が画一的であっても定型約款には該当しない。 「契約の内容とすることを目的として」とは、約款に記載された部分を含めて契約内容としようとする目的を持つことを意味する。 付随的条項だけでなく、価格・料金のような中心条項も定型約款に含まれる。 多くの事業者間取引のように、「通常の契約内容を十分に吟味し、交渉するのが通常であるといえる場合には、仮に当事者の一方によってあらかじめ契約書案が用意されていたとしても、それはいわゆるたたき台にすぎないが、このような場合には契約の内容はお互いに十分に認識することが前提であり」契約の内容とすることを目的とするとはいえない(・38頁)。 また、大企業が使用するひな形のように、交渉力の格差により事実上交渉の余地がないケースもあるが、その場合でも、「プロ同士の取引であって、画一的であることが両当事者にとって合理的といえないのであれば」定型約款には該当しない(・38頁)。 契約書ひな形に関して、経済界からは、事業者間取引について定型約款の規制から外すよう要請が行われていたが、事業者間取引であるという理由だけで定型約款から除外されることにはならなかった。 上記のように定型取引の要件解釈を通じてのみ適用が除外される点には留意する必要がある。 例えば、預金契約を締結するとか、保険契約を締結するといったレベルの合意である。 例えば、預金契約締結に際して「預金規定を承認の上で申し込む」旨記載された申込書を作成した場合のように、特定の定型約款を定型取引に関する契約の内容として組み入れることに合意した場合を指す。 「表示」は「相手方に」なされる必要があり、公表では足りない。 国会答弁では、取引を実際に行おうとする際に顧客である相手方に対して個別に面前で示されていなければならず、ホームページなど、そういったところで一般的にその旨を公表しているだけでは「表示」とはいえない。 約款そのものの表示まで求められるわけではないが、定型約款の内容についての具体的な表示が必要とされ、表示の方法は対面であれば言葉で発信するのが一番適切とされている(における小川政府参考人の答弁)。 また、相手方が異議を述べたときはそもそも定型約款を内容とする契約は成立しないから、組入れも起こらない(部会資料81B・16頁の「異議を述べないで」という要件が削除された趣旨の説明を参照)。 なお、従前の約款に関する議論においては、約款に含まれる個別の条項を契約に組み入れて拘束力を認める要件として、約款の内容(個別条項)の開示ないし契約相手にとっての約款の内容の認識可能性が必要であるとする見解が主流と評価されていた(19頁・沖野眞已「約款の「組入れ」、「開示」」の28頁参照)が、改正法では、開示と拘束力の問題が切り離されることとなった。 不当条項規制 民法548条の2第1項の要件を満たす場合であっても、「条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」については、合意をしなかったものとみなされる(第2項)。 を参考に立案された条項であるが、利益を害するか否かの判断基準、効果(消費者契約法10条は無効だが、こちらは不合意の擬制)に違いがある。 「定型取引の態様」は、「定型取引の特質上、相手方にとって客観的にみて予測しがたい条項」(いわゆる不意打ち条項)が不当条項規制の対象となり得ることを示したものと考えられる(・40頁)。 「その実情」は、個別の取引の実情を考慮するという意味である。 「取引上の社会通念」は、当事者間の公平を図る観点から、「その種の取引において一般的に共有されている常識」を示したものとされている。 (以上について、における小川政府参考人の答弁を参照。 ) 開示請求に対する定型約款の内容の開示 第1項は「定型約款準備者は定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。 」と定めている。 そして、「定型取引合意の前」にこの請求を拒んだ場合、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合を除き、民法548条の2による定型約款の組入れの効果は生じない(同条2項)。 この開示請求に対する開示義務は、「定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたとき」には適用されない(第1項ただし書)。 電磁的記録とは、定型約款の内容を記録したデータを電子メールにより提供する方法のように、「顧客がそのデータを管理し、自由にその内容を確認することが可能な態様」によらなくてはならないとされている( 政府参考人(小川秀樹)の答弁)。 この答弁は、開示請求への対応方法を検討する上でも参考になるだろう。 定型約款の変更 まず前提として、契約当事者の合意により定型約款の変更を行うことができることを確認しておきたい。 これに加えて、改正法により、合意がない場合でも、に定められている次の要件を満たせば、定型約款準備者が一方的に定型約款の内容を変更できることが明確にされた点が重要である。 実務上「この規約は状況の変化その他の事由がある場合に変更することがあります。 」等の条項 以下「変更条項」という。 を約款に入れておき、一方的に約款の内容を変更することがあるが(実例につき、63頁・山田誠一「具体的ケースを素材とした約款変更の検討」参照)、民法548条の2は、このような実務にいわばお墨付きを与えるものといえる(における小川政府参考人の答弁)。 定型約款の変更ができる場合 合意なしに定型約款を変更できるのは、次の2つの場合である。 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき(民法548条の4第1項1号)• 特定の相手方の利益では足りず、相手方一般の利益に適合しなければならない。 例えば、サービス料金の値下げや、料金を据え置いたままサービスを拡充する場合がこれに該当する( 政府参考人(小川秀樹)の答弁)。 相手方の事情としては、変更による相手方への不利益の程度、その軽減措置が図られているか、軽減措置の効果がどのようなものであるかといった事情が挙げられる( 政府参考人(小川秀樹)の答弁)。 変更条項は民法548条の4による変更の際に必須のものではなく、「変更に係る事情に照らして合理的」といえるならば、変更条項がなくても定型約款の変更が認められる。 ただし、変更条項があることは、変更の合理性の判断にあたって有利な事情として考慮されることから(・6頁)、定型約款に該当しそうな規定等には変更条項を入れることになるだろう。 変更条項に関して、変更を望まない相手方に解除権が付与されていることは、過大な違約金の定めにより解除が実質的に制限されているような場合を除き、合理性の判断にあたって有利な事情として考慮されるとの答弁(における小川政府参考人の答弁)があり、定型約款への対応を検討する上で参考になる。 上記の定型約款の変更の要件は、民法548条の2第2項不当条項規制よりも厳しい判断となることから、民法548条の4第4項により、組入れ時の不当条項規制(民法548条の2第2項)の適用が排除されている(・6頁)。 変更の周知 民法548条の4第1項により定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない(民法548条の4第2項)。 周知にインターネットを利用する場合、インターネットを利用できない相手方がいる場合であっても個別の通知が必要になるわけではない。 ただし、合理性を認める上で軽減措置が重要であり、かつ、顧客の年齢層等を考慮するとインターネットだけでは軽減措置を実行する機会が確保されないという事情がある場合には、インターネットだけでは足りず、書面による通知を組み合わせるべき場合があるとされている( 政府参考人(小川秀樹)の答弁)。 定型約款該当性を巡る紛争 定型約款に該当するか否かは、最終的には紛争において裁判所において判断される(における小川政府参考人の答弁。 なお、予見可能性確保のために、法務省が趣旨や具体例の周知を行っていく旨も答弁されている。 想定される紛争として、 1 定型約款の組入れが争われる場合(不当条項規制の適用の有無を含む)が争われる場合、 2 開示請求の効果が争われる場合、 3 一方的変更の効力が争われる場合が考えられる。 類型 3 では、一方的変更の効力を主張する事業者側が定型約款該当性を主張する構図になると想定される。 これに対し、類型(1)(2)では、定型約款該当性が否定された場合に適用される従来の約款に関する議論の内容が明確でないため、どのような主張をすればどちらに有利になるのか分からない事案もあると思われる。 そうすると、同じような約款であっても、紛争類型や事案の内容によって裁判所の判断にばらつきが出る可能性がある。 一方で、定型約款に該当しない場合でも、定型約款に関するルールを参照できるとの考え方もありうるところであり()、そのような考え方が支配的になれば、定型約款該当性の論点はそれほど重要でなくなるだろう。 いずれにせよ、今後の実務の積み重ねを注視する必要がある。 経過規定 定型約款に関する規定は、施行日(2020年4月1日)より前に締結された定型取引に係る契約についても適用される(債権法改正後の民法33条1項)。 つまり、現在既に使われている約款についても、定型約款の要件を満たす限り、定型約款に関する規定が適用される。 とはいえ、旧法の規定によって生じた効力を妨げないとされていることから(同項ただし書)、問題になるのは、定型約款の変更に関する民法548条の4である。 事業者としては、既存の約款について、同条の適用可否を見越した対応をできるだけ早く講じておくべきだろう。 経過措置については、契約の一方当事者(解除できる者は除く)により反対の意思表示が書面でされた場合には適用されない(附則33条2項)。 この反対の意思表示は、改正民法公布の日(平成29年6月2日)から1年以内の政令で定める日から施行日前までの間にしなければならない(附則1条2号)。 この反対の意思表示が行われると、改正後も、改正前の民法(従前の約款に関する議論)が適用されるが、それが反対の意思表示をする者にとって有利か不利かは判然としないことから、十分に慎重な検討を行う必要があると指摘する注意喚起が法務省からなされている()。 事業者としても、このような反対の意思表示を行った相手方との契約を、意思表示を行わなかった者との契約との関係でどのように管理するか等の問題を検討し、対応を準備しておく必要があるだろう。 (なお、平成29年12月20日付官報で公布された「民法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(政令第309号)」により、改正民法の施行日を2020年4月1日とすること等が決定された(も参照)。 上記の説明は、決定された施行期日による。

次の

民間連合協定工事請負契約約款等が改正されます

約款 民法 改正

2020年4月1日改正の新民法は、これまでに生じた取引に適用されるでしょうか。 また、基本契約がある取引や、規約・約款に基づく取引はどうなるでしょうか。 1 はじめに 2020年4月1日に新民法が施行されました。 施行日以降に生じた取引は、新民法に基づくことになります。 他方、施行日より前に締結されている契約には、従来の民法が適用されることがあります。 そのため、2020年4月1日以降も、従来の民法を全く参照する必要がなくなるわけではありません。 本稿では、新民法と従来の民法のいずれが適用されるのか、について実務上留意するべき点を解説します。 2 経過措置 2020年4月1日の施行日(以下、「施行日」といいます。 )を境にして、あらゆる法律関係について、突然に新民法を適用すると、従前の法律関係に基づいて営まれてきた社会生活の安定性は大きく損なわれてしまいます。 そこで、従来の民法によって生じた法律関係をある程度尊重して、円滑に新民法に基づく法律関係に移行する必要があります。 新民法では、一定期間、従前の民法の適用を認めることを定めています。 これを経過措置といいます。 (附則に定められています) 3 施行日(2020年4月1日)より前に締結された契約 施行日より前に締結された契約(2020年3月31日までに締結された契約)については、従来の民法が適用されます(附則第34条)。 このような契約についてトラブルが生じた場合には、従来の民法を参照して解決を図ることになります。 具体例は以下の通りです。 X社とY社との間で2019年12月1日に開発委託契約が締結されたとします。 この契約について、施行日後の2020年6月30日にX・Y間でトラブルが生じたとします。 この場合、トラブルが生じたのは施行日の後です。 しかし、契約の締結日が施行日前の2019年12月1日であるので、従来の民法によって解決することになります。 4 施行日前に締結した基本契約と、その個別契約 取引の基本的な条件を定めた基本契約を交わしておき、個別的な条件を定めた個別契約を随時交わすという取引は一般的にされています。 このような基本契約・個別契約に基づく取引に適用される法令を検討します。 基本契約については、施行日前に締結していれば、従来の民法が適用されます。 また、基本契約を施行日後に締結していれば、(当然ですが)新民法が適用されます。 個別契約については、施行日前に締結していれば、従来の民法が適用されます。 以上は特に問題ありませんが、基本契約を施行日より前に締結し、その個別契約を施行日後に締結した場合、その個別契約に適用されるのが新民法であるか、従来の民法であるかについては、必ずしも明確ではないといえます。 1つの考え方としては、施行日後に締結したものであるという点を重視し、新民法が適用されるという考えもあり得ます(この場合、基本契約は従来の民法、個別契約は新民法となります)。 もう1つの考え方としては、基本契約には従来の民法が適用されるため、個別契約についても従来の民法が適用されることが当事者の合理的意思と理解します。 この場合、個別契約についても、基本契約と同様に従来の民法が適用されるという考えもあります。 上記のとおり、施行日後に締結された個別契約に適用される法令は、明確ではありません。 そのため、施行日後の個別契約においては、例えば、「本個別契約に適用される法令は、基本契約に適用される法令と同一とする。 」などと明記しておくことが望ましいといえます。 (基本契約と個別契約が別個と法令の規律に服するとすれば、その解釈が極めて困難になるものと思われます) 5 施行日前に締結した契約が、施行日以降に合意更新された場合 施行日前に締結した契約が施行日以降に合意更新された場合には、合意更新されるまでに従来の民法が適用されます。 他方、合意更新された後は、たとえ施行日より前に締結された契約であっても、新民法が適用されます(法務省見解)。 この理由としては、契約の締結の時点で、更新されて新民法が適用されることを予測できたためとされます。 2019年7月1日に、X社とY社は、賃貸借契約を締結しました。 契約期間は1年間であり、契約期間満了日までに更新拒絶をしなければ自動的に更新することになっています。 この契約について、自動更新がされた場合、それぞれの期間において、適用される民法はどのようになるかを検討します。 この契約は、2019年7月1日から2020年6月30日までが契約期間です。 2020年4月1日の施行日以降も、6月30日までは、従来の民法が適用されます。 2020年7月1日に自動更新された後は、新民法が適用されます。 このように、合意更新がされるまでは従来の民法が適用され、合意更新がされた以降は、新民法が適用されることとなります。 契約書の内容が新民法に従ったものになっていない場合には、トラブルになりかねません。 また、法務省の見解は上記のとおりであったとしても、当事者としては、必ずしも合意更新後は新民法を適用する意思ではなかった場合もあると思われます。 このように、合意更新後の契約条件について、新民法であるのか、従来の民法であるのかに関して疑義が生じるおそれがあります。 このおそれがある場合は、契約の相手方と協議をして、いずれが適用されるべきであるのかを確認し、覚書を交わしておくなどすれば、明確になり安心です。 6 定型約款 多くの利用者との間で契約を締結するために、規約や約款などの一律の契約条件を用意し、これに従ってもらうという運用をしているサービスも多いと思われます。 このような規約や約款は、新民法では、「定型約款」として、その内容や手続きについてルールが定められています。 定型約款については、施行日前に生じた取引であっても、施行日以後は、新民法の規律が適用されます(附則第33条)。 この点、他の契約などとは大きく異なる点であるので、注意が必要です。 (ただし、例外的に、施行日より前に「反対の意思表示」をしていた場合は、施行日前に生じた取引に関し、新民法が適用されます) 具体例は、以下の通りです。 X社は、2019年4月1日に利用規約を制定してサービスをリリースし、リリース直後から多数のユーザーがこのサービスを利用するようになっています。 X社は、利用規約には、「新民法の施行日以降も現行民法を適用する」旨を記載していません。 この場合、2020年4月1日の施行日以降は、これらのユーザーについて、全て新民法が適用され、定型約款の規律に服することになります。 これは、施行日より前に利用規約に同意したユーザーなども同じく、新民法が適用されます。 7 最後に 以上のとおり、新民法が施行された後も、従来の民法が適用される場合があります。 また、従来の民法と新民法のいずれが適用されるのかが不明確な場面もあります。 この検討のために本稿が役立つと幸いです。 8 参照条文(新民法附則) (定型約款に関する経過措置) 第三十三条 新法第五百四十八条の二から第五百四十八条の四までの規定は、施行日前に締結された定型取引(新法第五百四十八条の二第一項に規定する定型取引をいう。 )に係る契約についても、適用する。 ただし、旧法の規定によって生じた効力を妨げない。 2 前項の規定は、同項に規定する契約の当事者の一方(契約又は法律の規定により解除権を現に行使することができる者を除く。 )により反対の意思の表示が書面でされた場合(その内容を記録した電磁的記録によってされた場合を含む。 )には適用しない。 3 前項に規定する反対の意思の表示は、施行日前にしなければならない。 (贈与等に関する経過措置) 第三十四条 施行日前に贈与、売買、消費貸借(旧法第五百八十九条に規定する消費貸借の予約を含む。 )及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例による。 2 前項の規定にかかわらず、新法第六百四条第二項の規定は、施行日前に賃貸借契約が締結された場合において施行日以後にその契約の更新に係る合意がされるときにも適用する。 3 第一項の規定にかかわらず、新法第六百五条の四の規定は、施行日前に不動産の賃貸借契約が締結された場合において施行日以後にその不動産の占有を第三者が妨害し、又はその不動産を第三者が占有しているときにも適用する。 Category:契約 , 契約書 TAGS:企業法務 , 契約 , 契約書 , 従来の民法 , 改正民法 , 新民法 , 旧民法 , 民法 , 民法改正.

次の