憲法 29 条 3 項。 損失補償

【憲法29条】財産権をわかりやすく解説!(経済的自由権)

憲法 29 条 3 項

【弁護士】 29条1項は,「財産権は,これを侵してはならない。 」と規定しています。 【生徒】 「財産権」って何ですか?今財布に1万円札が入っているんですが,これも財産権なんですか? 【弁護士】 その通り。 財産権とは財産上の権利ということだね。 君が持っている一万円を君が自由に使える立場にあるならば,その一万円の財産権は君にあるということだね。 【生徒】 なるほど!それじゃあ,この規定は,今僕が持っている財産は国に奪われたりはしないということを示したものなんですか? 【弁護士】 そういうことです。 ただ,この規定は,個人が現に持っている具体的な財産上の権利を保障しただけではなく,財産を取得し保持する権利一般を制度として保障する(私有財産制度の保障)という側面もあるんだ。 【生徒】 なんかよくわからなくなってきました。 【弁護士】 つまりね,私は今ここに鞄を持っていて,この鞄に対する所有権を持っているわけなんだけれども,所有権という権利が成り立つのは,財物に対する私的な所有を認めるという法制度があればこそなんだ。 そのような制度がなければそもそも所有権なんて概念は生まれてこないからね。 【生徒】 なるほど,具体的な財産権の前提として,そのための制度そのものがこの規定で保障されているというわけですね。 ところで,2項では「財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。 」とあるのですが,「公共の福祉」ってそもそも何なんですか? 【弁護士】 「公共の福祉」というワードは13条のところで一回出てきたんじゃないかな?一応ここでも「全国民の利益」というくらいの意味で捉えておけば良いかと思います。 【生徒】 それじゃあ,「全国民の利益」に合うように法律で定めてよいって考えればいいんですか。 【弁護士】 そうですね。 ここでは,「公共の福祉」の内容として2種類あることは押さえておきましょう。 自由国家的公共の福祉と社会国家的公共の福祉があるんです。 【生徒】 自由国家的とか社会国家的とか意味がよくわからないです… 【弁護士】 ここではイメージだけつかんでおきましょう。 自由国家的公共の福祉というのは,災害等を防ぐために土地の利用方法を制限する場合などです。 つまり,国民の生命や身体,財産が危険にさらされることを防ぐために,財産権を制限するのが自由国家的公共の福祉による制限なんです。 【生徒】 建物を建てるときに耐火構造やら耐震構造やらたくさんの制約が法律によって課されているのは自由国家的公共の福祉による制限ってことですか? 【弁護士】 そうですね。 周囲への危険発生を防ぐための制約ですから,自由国家的公共の福祉の例といえます。 【生徒】 それじゃあ,社会国家的公共の福祉とはどんなものなんですか? 【弁護士】 例えば,環境保護のために土地や建物の使用を制限するような場合です。 町並み条例というものがあったりして,条例によって,玄関前に花を植えなければならないといった制約が課されることがあります。 このような制約は,誰かに危害を加えることを防ぐための制約とは違って,住民がより住みやすい環境を享受するための制約といえます。 このような場合が,社会国家的公共の福祉による制約です。 【生徒】 イメージだけはつかめました。 自由国家的公共の福祉による制約は国民にマイナスが生じることを防ぐためで,社会国家的公共の福祉による制約は国民にプラスの効果をもたらすための制約という感じですよね。 【弁護士】 そういうイメージで間違いないでしょう。 次に3項です。 「私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる。 」とされています。 【生徒】 「公共のために用ひる」っていうのはどういう意味なんですか?皆のために使うっていうこと? 【弁護士】 うん,まぁそういう意味だね。 「公共のため」とは,収用全体の目的が広く社会公共の利益のためになるってこと。 つまり,公共事業のために私有財産を収用することだね。 【生徒】 もう少し噛み砕いて説明して下さい。 いまいちわかりません。 【弁護士】 例えば,国が新たに高速道路を造ろうとする場合を考えてみよう。 その場合に,道路を造ろうとする土地を国民から無理やり取り上げることは認められないですが,所有者に立ち退きを求めて買い取ることはできるということです。 これが,公共事業のために財産を収用するということです。 これが認められないと,国家は政策を実現できなくなってしまいますからね。 【生徒】 「公共のために用ひる」ことがどういうことかはわかりましたが,「正当な補償」は何をもって正当といえるのですか?立ち退きを求められる側からすれば,正当な補償は適切に判断してもらわなければ経済的損失を被ることになりますよね。 【弁護士】 そうだね。 これは難しい問題だけど,その土地や建物を普通に不動産屋に売ったら売れたであろう額を100%補償してあげるというのが今日の通説的な考え方だね。 判例の考えははっきりしていないと言われたりもするけど,通説のように完全に補償すること「正当な補償」だととりあえず覚えておこう。

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日本国憲法第29条

憲法 29 条 3 項

自粛要請と営業補償(憲法29条3項) 2020年5月26日 新型コロナウイルスの感染拡散防止のため、緊急事態宣言が発出され、不自由な生活を強いられていることと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。 学校も休校が長引いて子どもたちと一日中一緒にいるのも限界だとか、家でじっとしているとストレスがたまって家族間でも不和が生じるとか、いつも行くお店が閉まっていて不便だとかいう声をたくさん聞きます。 それぞれ重大な問題なのですが、とりわけ、営業自粛を求められて、お店を休業にしたり時間を短縮したりしなければならない自営業者の皆さんにとっては死活問題で、廃業に追いやられる人たちも多いと思います。 そんな中での国会論戦で、特に日本共産党などの野党から「自粛と補償をセットで」という主張をよく聞きますが、自粛を求める政府(国)には法律上、営業補償を行う義務はないのかと感じることでしょう。 たしかに現在の緊急事態宣言発出の根拠法である 新型インフルエンザ対策特別措置法(以下「特措法」)には、補償を必要とする条文はありません。 では補償は不要なのかと言うと、そうではなく、憲法上の権利として補償を求めていく方法があります。 それが 憲法29条です。 29条3項は、 「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」と定めています。 逆に言えば、公共のために私有財産を用いた場合には正当な補償をしなければならないのです(損失補償)。 典型的には、公共のために土地を収用(取り上げる)した場合に、土地の対価を補償する、という場面です。 しかし、このように財産を取り上げる(収用)場合だけではなく、別の形で公共のために私有財産の利用を制限して財産上の損失を被った場合についても、この条文を使って損失補償すべきだという解釈(学説)があります。 今回のケースはまさしく、国民への感染拡大防止という公益目的(公共のため)があって、自営業者に営業上(財産上)の損失を強制しているようなものですので、当然、 29条3項に基づく損失補償がされてしかるべきなんです。 それを定めていない現行の特措法は欠陥法(違憲な法律)です。 直ちに違憲状態を解消するように法を改正して、国民のために営業を我慢して耐えている事業者の皆さんに、税金によって、正当な営業補償をするよう求めていく必要があります。 弁護士 伊藤勤也(名古屋北法律事務所) (2020年5月「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています).

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憲法をわかりやすく 第10章 経済的自由権 三、財産権の保障

憲法 29 条 3 項

【弁護士】 29条1項は,「財産権は,これを侵してはならない。 」と規定しています。 【生徒】 「財産権」って何ですか?今財布に1万円札が入っているんですが,これも財産権なんですか? 【弁護士】 その通り。 財産権とは財産上の権利ということだね。 君が持っている一万円を君が自由に使える立場にあるならば,その一万円の財産権は君にあるということだね。 【生徒】 なるほど!それじゃあ,この規定は,今僕が持っている財産は国に奪われたりはしないということを示したものなんですか? 【弁護士】 そういうことです。 ただ,この規定は,個人が現に持っている具体的な財産上の権利を保障しただけではなく,財産を取得し保持する権利一般を制度として保障する(私有財産制度の保障)という側面もあるんだ。 【生徒】 なんかよくわからなくなってきました。 【弁護士】 つまりね,私は今ここに鞄を持っていて,この鞄に対する所有権を持っているわけなんだけれども,所有権という権利が成り立つのは,財物に対する私的な所有を認めるという法制度があればこそなんだ。 そのような制度がなければそもそも所有権なんて概念は生まれてこないからね。 【生徒】 なるほど,具体的な財産権の前提として,そのための制度そのものがこの規定で保障されているというわけですね。 ところで,2項では「財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。 」とあるのですが,「公共の福祉」ってそもそも何なんですか? 【弁護士】 「公共の福祉」というワードは13条のところで一回出てきたんじゃないかな?一応ここでも「全国民の利益」というくらいの意味で捉えておけば良いかと思います。 【生徒】 それじゃあ,「全国民の利益」に合うように法律で定めてよいって考えればいいんですか。 【弁護士】 そうですね。 ここでは,「公共の福祉」の内容として2種類あることは押さえておきましょう。 自由国家的公共の福祉と社会国家的公共の福祉があるんです。 【生徒】 自由国家的とか社会国家的とか意味がよくわからないです… 【弁護士】 ここではイメージだけつかんでおきましょう。 自由国家的公共の福祉というのは,災害等を防ぐために土地の利用方法を制限する場合などです。 つまり,国民の生命や身体,財産が危険にさらされることを防ぐために,財産権を制限するのが自由国家的公共の福祉による制限なんです。 【生徒】 建物を建てるときに耐火構造やら耐震構造やらたくさんの制約が法律によって課されているのは自由国家的公共の福祉による制限ってことですか? 【弁護士】 そうですね。 周囲への危険発生を防ぐための制約ですから,自由国家的公共の福祉の例といえます。 【生徒】 それじゃあ,社会国家的公共の福祉とはどんなものなんですか? 【弁護士】 例えば,環境保護のために土地や建物の使用を制限するような場合です。 町並み条例というものがあったりして,条例によって,玄関前に花を植えなければならないといった制約が課されることがあります。 このような制約は,誰かに危害を加えることを防ぐための制約とは違って,住民がより住みやすい環境を享受するための制約といえます。 このような場合が,社会国家的公共の福祉による制約です。 【生徒】 イメージだけはつかめました。 自由国家的公共の福祉による制約は国民にマイナスが生じることを防ぐためで,社会国家的公共の福祉による制約は国民にプラスの効果をもたらすための制約という感じですよね。 【弁護士】 そういうイメージで間違いないでしょう。 次に3項です。 「私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる。 」とされています。 【生徒】 「公共のために用ひる」っていうのはどういう意味なんですか?皆のために使うっていうこと? 【弁護士】 うん,まぁそういう意味だね。 「公共のため」とは,収用全体の目的が広く社会公共の利益のためになるってこと。 つまり,公共事業のために私有財産を収用することだね。 【生徒】 もう少し噛み砕いて説明して下さい。 いまいちわかりません。 【弁護士】 例えば,国が新たに高速道路を造ろうとする場合を考えてみよう。 その場合に,道路を造ろうとする土地を国民から無理やり取り上げることは認められないですが,所有者に立ち退きを求めて買い取ることはできるということです。 これが,公共事業のために財産を収用するということです。 これが認められないと,国家は政策を実現できなくなってしまいますからね。 【生徒】 「公共のために用ひる」ことがどういうことかはわかりましたが,「正当な補償」は何をもって正当といえるのですか?立ち退きを求められる側からすれば,正当な補償は適切に判断してもらわなければ経済的損失を被ることになりますよね。 【弁護士】 そうだね。 これは難しい問題だけど,その土地や建物を普通に不動産屋に売ったら売れたであろう額を100%補償してあげるというのが今日の通説的な考え方だね。 判例の考えははっきりしていないと言われたりもするけど,通説のように完全に補償すること「正当な補償」だととりあえず覚えておこう。

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