イージス艦 こんごう。 「はぐろ」進水で海自イージス艦は8隻体制へ ―弾道ミサイル防衛システム (BMDS)の 能力向上―

新イージス艦名「よしの」なら中国への配慮必要

イージス艦 こんごう

2019-07-25 令和元年 松尾芳郎 図1: SankeiBiz、酒巻俊介氏撮影 2019年7月17日午後、JMU横浜造船所で海上自衛隊の最新イージス艦の進水式が開かれ、「はぐろ」 艦番号180 と命名された。 2021年 令和3年 3月就役の予定で、これでイージス艦8隻態勢が整う。 秋田、山口両県への地上配備型「イージス・アショア」の配備と合わせて、弾道ミサイル防衛システム BMDS の能力向上が期待される。 弾道ミサイルには射程の短い短距離型から、中距離、大陸間を飛翔する長距離型まで、様々あり、これを迎撃するため米国は長い期間を掛けて防衛体制を築き上げてきた。 敵弾道ミサイルの発射・追跡は、情報収集監視衛星、各地に配備された警戒管制レーダー、AWACS早期警戒機、などで行う。 2023年以降は陸上配備型「イージス・アショア」が加わるので、上層域での迎撃態勢が相当強化される。 [BMDS]の構成 弾道ミサイル防衛システムの構成は次の3つからなる。 各センサーと迎撃ミサイルを結ぶ情報通信ネットワーク、すなわち戦闘指揮、司令、を司るネットワーク。 脅威 米国の「弾道ミサイル防衛システム」は、米本国のみならず英国、日本、オーストラリア、イスラエル、ドイツ、など各地に駐留する米軍の要員で運用されている。 弾道ミサイルを保有する国々は、その性能向上に力を注ぎ、長射程化を図っている。 かつては超大国だけが保有していた弾道ミサイルは、今や世界中に広がり、射程の延長や、飛翔経路の複雑化など、ミサイル防衛体制を無力化する技術に力を入れている。 最近の特徴は、有効な対抗措置が難しい極超音速で滑空飛来するミサイルの開発が中国などで進んでいる。 [BMDS]の構成要素 1. この間はミサイルの排気が最も輝き高温になるのでセンサーで容易に識別できる。 迅速に対応すれば弾頭が分離する前に撃墜でき、最も有効な対処となる。 ミッドコース Midcourse Phase ミッドコース・フェイズはミサイルのブースターが燃焼し終わり弾頭が分離される辺りから始まる。 このフェイズは宇宙空間を飛翔する10分ないし20分ほどの時間になり、それから目標に向かって降下を始める。 この区間で弾頭を撃破する場合、壊れた破片は大気圏に突入して燃え尽きるので心配はない。 米国では本土防衛のために、アラスカとカリフォルニアに「ミッドコース防衛」システムを配備して、飛来する中・長射程ミサイルに対処している。 ルーマニアでの運用が始まる2020 年には欧州全域の防衛態勢が整う。 我国でも「イージス・アショア」の配備計画が進んでいる。 配備は秋田県秋田市陸自新屋演習場、および山口県萩市陸自むつみ演習場、の2箇所。 この配備が予定通り2023年に完成すれば、中国・ロシア・北朝鮮からの弾道ミサイルを常時迎撃できる体制が整うことになり、現在「BMD」任務を担当している海自イージス艦の負担が大きく軽減される。 図3;海自のBMD改修済みイージス艦が舞鶴基地に展開するとして、そこを中心に、[SM-3 Block IIA]の迎撃可能な範囲2,000 kmを描いた図。 併せて「イージス・アショア」の配備基地2カ所を示してある。 ここに配備する[Block IIA]の迎撃範囲は中国、ロシア両国の内陸部に大きく広がるため、両国は「地域の軍事バランスを乱す」として強硬に反対している。 現在イージス艦に搭載している「SM-3 Block 1A」は主に短距離弾道ミサイル迎撃用で、射程はおよそ1,200 kmとされる。 2020年以降に配備が始まる「SM-3 Block IIA」は日米両国の共同開発で2つの新しい機能を備えている。 第1は、ロケットモーターを太く直径21 inchにして、広い範囲の防空を可能にしている。 迎撃可能範囲は2,000 km以上3,000 kmに拡がると言われている。 また到達高度、いわゆる射高は[Block IA]の600 kmに対し、[Block IIA]は1,000 kmをはるかに超える。 これで中国が大量に配備を進めている中距離弾道ミサイル[DF-21]、 [DF26C]などに対する迎撃能力が大幅に向上する。 第2は、弾頭が大型になり、搭載センサーが改良されるので、機動・追尾能力が高まり、探索・識別・捕捉・機能が向上し、新開発の敵弾道ミサイルにも対応できる。 「SM-3」迎撃ミサイルの試験は「Block 1A」、改良型の「Block IB」、それに「Block IIA」で行われてきた。 飛来する模擬弾頭を大気圏外で捕捉・撃破する試験で、捕捉・追尾には自身のレーダーだけでなく、センサー・ネットワークを使い、友軍の早期警戒機などの情報を利用し模擬中距離弾道ミサイルの迎撃を行なった。 このプログラムでは我が海自のイージス艦からの複数回の発射試験を含め、合計で30回以上の迎撃に成功している。 「SM-3 Block 1A」はこれまでに日米両海軍に250基以上が納入済み。 この情報を基に[SM-3 Block IIA]を発射、目標を大気圏外で撃破した。 図5: Raytheon 「Raytheon Home」の図を改定したもの。 「SM-3 Block IIA」は中長距離弾道ミサイル迎撃用で、日米共同 レイセオン[Raytheon]と三菱重工 で開発している。 三菱重工が「ノーズコーン」、「3段目ロケット」、「段結合部」、「2段目ロケット」、「姿勢制御部」を担当している。 「SM-3 Block IAおよびIB」の直径は13. 5 inch 34 cm に対し「SM-3 Block IIA」は21 inch 53 cm になり、速度、迎撃範囲が広がり、KW弾頭も大型化され新型センサーが搭載され、追尾能力が向上、中距離弾道ミサイルへの対応能力が高まる。 ここが最後の迎撃チャンスで、僅かの誤差も許されず、高い精度で行われなくてはいけない。 「PAC-3」には、迎撃高度を20 km以上に延ばし、防空可能な面積を2倍以上に拡げた「PAC-3 MSE」 Missile Segment Enhancement に更新する計画が2019年度から始まっている。 図6:「ペトリオット」対空ミサイルの比較表。 [PAC-3 MSE]は直径が[PAC-3]より太く、迎撃高度・射程が向上している。 我国の弾道ミサイル防衛システム BMDS 我国の「BMDS」については図1を参照されたい。 これを「自動警戒管制システム(JADGE)」で連携実施する構想だ。 「BMDS」の運用は、空自航空総隊司令官の指揮下に「BMD統合任務部隊」を置き、「JADGE」などを通じて一元的な戦術指導を行う態勢になっている。 図7:(平成30年版防衛白書)我国の弾道ミサイル防衛を示すイメージ図。 イージス艦定係港は横須賀、舞鶴、佐世保の3箇所、8隻が揃うと呉を含む4港に2隻ずつ配備が可能。 空自[FPS-5]レーダーは三菱電機製で、中・長距離用弾道ミサイルの探知・追跡用、高さ34 mの3角柱建屋 回転可能 の1面に直径18 mのL, Sバンドのアンテナと、他の2面に直径12 mのLバンドアンテナを装備する。 配備は大湊、佐渡、下甑島、与座岳の4箇所。 探知距離は数千km に達する。 空自[FPS-3改]レーダーも三菱電機製で、Xバンドアンテナをドーム内で回転させ、600 km以上の範囲を監視する中距離用レーダー。 配備は北から当別、加茂、大滝根山、輪島、経ヶ崎、笠取山、背振山の7箇所。 低層域での迎撃を担当する空自高射群は、[SM-3]の迎撃をくぐり抜け「ターミナル域」に侵入したミサイル弾頭を高度15 km以上で迎撃、直径20 km以上の範囲を破壊から守る役目を担う。 北から千歳第3高射群、三沢第6高射群、入間第1高射群、岐阜第4高射群、春日第2高射群、那覇第5高射群、の6個所に配備されている。 各高射群は4個高射隊で構成されている。 例えば第1高射群であれば、高射隊は習志野、武山、霞ヶ浦、入間に配置され、非常時には習志野第1高射隊の一部が市ヶ谷に進出、首都防衛に当たる。 各高射隊はランチャー launcher 5両で編成、各ランチャーは[PAC-3 MSE]なら12発を搭載する。 こうして24高射隊120両ランチャーで全国の基地、発電所、空港、都市などの下層域防空を担当する、しかし配備数が少ないので下層域の防空体制は不十分。 これを補完するには上層域の防空体制を一層完全なもにする必要があり、そのためにもイージス艦の増勢とイージス・アショアの配備が不可欠である。 新型イージス艦「はぐろ」の進水 海自の新型イージス艦が7月17日に横浜のジャパン・マリン・ユナイテッド社 JMU の磯子工場で 進水式を行い「羽黒」[DDG 180]と命名された。 「はぐろ」の完成・就役は2021年3月の予定。 これで海自のイージス艦は1993年に就役した「こんごう」を含め8隻体制となる。 (注)「共同交戦能力 CEC 」とは、射撃指揮に使える高精度の情報をリアルタイムで共有し、全体で共同して対処・交戦するシステムのこと。 レイセオンが米海軍から受注、開発している。 類似のシステムに「戦術データ・リンク」[Link 16]システムがあるが、これは空自のE-2C早期警戒機、E-767早期警戒管制機、F-15J戦闘機(改修済み)、ペトリオットPAC-3、JADGEシステム、さらに海自イージス艦「こんごう」級などに装備済みである。 「共同交戦能力 CEC 」は、この[Link 16]よりずっと高速の「データ・リンク」で、その運用のための戦術情報処理装置が必要となる。 防衛省では2019年12月から導入する早期警戒機[E-2D]にも CEC を搭載する。 「はぐろ」は全長170 m、幅21 m、基準排水量8,200 ton、最大速力30 Kt+、推進機関はガスタービン、低速時にはガスタービン駆動の発電機・電力を使う電気推進方式で航行する。 乗員は約300名、建造費は約1,700億円。 8隻体制が完成すれば、4つの護衛隊群に2隻ずつ配備が可能となり、常時2隻のイージス艦を弾道ミサイル防衛「BMD」任務に充てることができる。 イージス艦の任務は「BMD」だけでなく、本来の役目は大型艦 空母「いずも」など を含む僚艦防空や対潜攻撃など多くある。 米海軍はイージス艦としてタイコンデロガ級巡洋艦とアーレイバーク級駆逐艦合わせて80隻以上を保有中で、そのうち「BMD」改修を付与したのは2018年で38隻で、2019年末には41隻になる。 これを太平洋と大西洋に分けて配備している。 「まや」級の2隻は海自イージス艦の中の最新型。 搭載する「SM-3 Block IIA」は現在配備中の「SM-3 Block IA」の2倍以上の射程を持つので、中国、ロシアの奥地から飛来する弾道ミサイルを容易に撃破できる。 「共同交戦能力 CEC 」で敵弾道ミサイルに対応するのは、いわば「複数の目」で敵ミサイルの動きを知ることになるので確度が高くなり、迎撃時間に余裕ができる。 図8: 世界の艦船2016年1月号掲載の図に加筆作成 「まや」級イージス艦の概要。 基準排水量は「あたご」級より500 ton、「こんごう」級より1,000 ton増えている。 また全長もそれぞれ 5 m、9 m長くなっている。 図9:(海上自衛隊)BMD 5. 0改修が終わった「あたご」。 敵弾道ミサイルを成層圏で迎撃する[SM-3 Block IIA]の発射能力を持つ。 図10:海自イージス艦8隻の一覧表。 6」は[SM-3 Block 1A]および[Block 1B]の発射能力がある。 「あたご」級2隻の「BMD 5. 0」および「まや」級2隻の「BMD 5. 1」は[SM-3 Block IIA]の発射能力を持つ。 「こんごう」級4隻を「あたご」、「まや」と同レベルにする改修は計画されていない。 一方我国にとっての最大の脅威は、中国が増強する[DF-21]中距離弾道ミサイル、射程は日本全域を狙える2,000 km、弾頭には500 k ton核弾頭を装備、2段式固体燃料ロケットで車載型、発射準備には10-15分程度しかかからない。 もう一つは今年1月に中国北西部から数発を南支那海に向けて試射したと伝えられる射程距離3,000 km を超える[DF-26]弾道ミサイル、こちらはグアムなどをその射程に収め、航行中の空母攻撃が可能な精密誘導が行える。 中国政府高官は2016年10月に「微博」上に保有するミサイル数を公表した。 それによると[DF21]、]DF-26]などの中距離弾道ミサイル300発、長距離弾道ミサイル200発、射程1,000 km程度の短距離弾道ミサイルを1,150発、射程数100 kmの巡航ミサイルを3,000発保有するという。 これは、我国の軍事基地、港湾、都市、電力施設などに対し、反撃能力を上回る「飽和攻撃」を加えるのに十分な規模と銘記すべき。 イージス艦のさらなる増勢、「イージス・アショア」の1日も早い設置が望まれる理由はここにある。 ところが一部マスコミは設置計画に瑕疵があるとして反対を煽っている。 これは中国に与する利敵行為に他ならない。 COM Oct 29.

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日本とアメリカと韓国のイージス艦の性能に違いはどれくらいあるのでしょうか...

イージス艦 こんごう

「こんごう型」は基準排水量7250t、満載時9485t、建造費約1200億円という大型で高価な。 射程120kmのSM2MR対空ミサイル74発を搭載、同時に12発以上のミサイルを別々の目標 攻撃機や に誘導できる。 の対空ミサイル艦が射程30km余のミサイルを最大で同時に2発しか誘導できなかったのに比べ、能力は大幅に向上し、の監視にも活躍、弾道ミサイルに対抗する海上配備型迎撃ミサイル を搭載する計画で、「こんごう型」4隻に加え、満載排水量1万tの「型」1隻が07年に、他に1隻を建造中。 田岡俊次 軍事ジャーナリスト / 2008年 出典 株 朝日新聞出版発行「知恵蔵」 知恵蔵について の解説 航空機とミサイルの同時多数攻撃に対応するAegis Systemを装備した艦艇のこと。 1963年アメリカの国防長官マクナマラは、艦艇用ミサイルシステム(ASMS=Advanced Surface Missile System)を承認し、それに伴い、米海軍は1983年に最初のイージス艦を就役させた。 イージス艦は約200目標の同時追尾ができるフェーズド・アレイ・レーダー(位相配列レーダー)を装備し、武器管制システムはコンピュータで統制されており、目標探知、ミサイル発射および結果の評価は自動的に行われる。 前後甲板の垂直発射装置(VLS=Vertical Launching System)には射程約70キロメートルのセミアクティブ・レーダー・ホーミング艦対空ミサイルが搭載されており、在来艦の4倍以上の16または18の目標を同時に攻撃可能であるといわれている。 VLSには射程約9キロメートルの対潜ロケット(ASROC=Anti-Submarine Rocket)や巡航ミサイルも装填 そうてん することができる。 その他、発射速度毎分3000発の6砲身ガトリング砲が、近接防御火器システム(CIWS=Close in Weapon System)として搭載されているほか、射程約15キロメートルの5インチ砲、射程100キロメートルを超える艦対艦ミサイルも搭載されている。 防衛庁(現防衛省)は洋上防空体制の中枢を担うものとして1987年(昭和62)に導入を決定。 システムを輸入し、国産護衛艦に搭載されることになり、1993年(平成5)3月、その一番艦「こんごう」(7250トン)が竣工した。 2010年(平成22)時点で「こんごう」型イージス艦4隻(「こんごう」「きりしま」「みょうこう」「ちょうかい」)、「あたご」型イージス艦(7750トン)2隻(「あたご」「あしがら」)が配備されている。 また、2007年12月には、「こんごう」に搭載されたスタンダード・ミサイル(SM-3)の発射実験がハワイのカウアイ島沖で行われ、高度100キロメートル以上の大気圏外を飛行する標的ミサイル1発の迎撃に成功した。 2008年11月には、「ちょうかい」がカウアイ島沖でSM-3の発射試験を行ったが、SM-3の弾頭部分の不具合により標的ミサイルには命中しなかったものの、BMD(弾道ミサイル防衛)システムが正常に作動していることが確認された。 2009年10月には、「みょうこう」が弾道ミサイル迎撃実験を行い、事前通知のない条件下で標的ミサイルの捕捉・追尾・迎撃に成功している。 2010年末時点で、イージス艦は米海軍および海上自衛隊のほか、韓国、ノルウェー、スペインの各海軍により運用されている。 なお、イージスとはギリシア神話に登場する戦争の女神アテナの盾である。

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こんごう型護衛艦

イージス艦 こんごう

2019-07-25 令和元年 松尾芳郎 図1: SankeiBiz、酒巻俊介氏撮影 2019年7月17日午後、JMU横浜造船所で海上自衛隊の最新イージス艦の進水式が開かれ、「はぐろ」 艦番号180 と命名された。 2021年 令和3年 3月就役の予定で、これでイージス艦8隻態勢が整う。 秋田、山口両県への地上配備型「イージス・アショア」の配備と合わせて、弾道ミサイル防衛システム BMDS の能力向上が期待される。 弾道ミサイルには射程の短い短距離型から、中距離、大陸間を飛翔する長距離型まで、様々あり、これを迎撃するため米国は長い期間を掛けて防衛体制を築き上げてきた。 敵弾道ミサイルの発射・追跡は、情報収集監視衛星、各地に配備された警戒管制レーダー、AWACS早期警戒機、などで行う。 2023年以降は陸上配備型「イージス・アショア」が加わるので、上層域での迎撃態勢が相当強化される。 [BMDS]の構成 弾道ミサイル防衛システムの構成は次の3つからなる。 各センサーと迎撃ミサイルを結ぶ情報通信ネットワーク、すなわち戦闘指揮、司令、を司るネットワーク。 脅威 米国の「弾道ミサイル防衛システム」は、米本国のみならず英国、日本、オーストラリア、イスラエル、ドイツ、など各地に駐留する米軍の要員で運用されている。 弾道ミサイルを保有する国々は、その性能向上に力を注ぎ、長射程化を図っている。 かつては超大国だけが保有していた弾道ミサイルは、今や世界中に広がり、射程の延長や、飛翔経路の複雑化など、ミサイル防衛体制を無力化する技術に力を入れている。 最近の特徴は、有効な対抗措置が難しい極超音速で滑空飛来するミサイルの開発が中国などで進んでいる。 [BMDS]の構成要素 1. この間はミサイルの排気が最も輝き高温になるのでセンサーで容易に識別できる。 迅速に対応すれば弾頭が分離する前に撃墜でき、最も有効な対処となる。 ミッドコース Midcourse Phase ミッドコース・フェイズはミサイルのブースターが燃焼し終わり弾頭が分離される辺りから始まる。 このフェイズは宇宙空間を飛翔する10分ないし20分ほどの時間になり、それから目標に向かって降下を始める。 この区間で弾頭を撃破する場合、壊れた破片は大気圏に突入して燃え尽きるので心配はない。 米国では本土防衛のために、アラスカとカリフォルニアに「ミッドコース防衛」システムを配備して、飛来する中・長射程ミサイルに対処している。 ルーマニアでの運用が始まる2020 年には欧州全域の防衛態勢が整う。 我国でも「イージス・アショア」の配備計画が進んでいる。 配備は秋田県秋田市陸自新屋演習場、および山口県萩市陸自むつみ演習場、の2箇所。 この配備が予定通り2023年に完成すれば、中国・ロシア・北朝鮮からの弾道ミサイルを常時迎撃できる体制が整うことになり、現在「BMD」任務を担当している海自イージス艦の負担が大きく軽減される。 図3;海自のBMD改修済みイージス艦が舞鶴基地に展開するとして、そこを中心に、[SM-3 Block IIA]の迎撃可能な範囲2,000 kmを描いた図。 併せて「イージス・アショア」の配備基地2カ所を示してある。 ここに配備する[Block IIA]の迎撃範囲は中国、ロシア両国の内陸部に大きく広がるため、両国は「地域の軍事バランスを乱す」として強硬に反対している。 現在イージス艦に搭載している「SM-3 Block 1A」は主に短距離弾道ミサイル迎撃用で、射程はおよそ1,200 kmとされる。 2020年以降に配備が始まる「SM-3 Block IIA」は日米両国の共同開発で2つの新しい機能を備えている。 第1は、ロケットモーターを太く直径21 inchにして、広い範囲の防空を可能にしている。 迎撃可能範囲は2,000 km以上3,000 kmに拡がると言われている。 また到達高度、いわゆる射高は[Block IA]の600 kmに対し、[Block IIA]は1,000 kmをはるかに超える。 これで中国が大量に配備を進めている中距離弾道ミサイル[DF-21]、 [DF26C]などに対する迎撃能力が大幅に向上する。 第2は、弾頭が大型になり、搭載センサーが改良されるので、機動・追尾能力が高まり、探索・識別・捕捉・機能が向上し、新開発の敵弾道ミサイルにも対応できる。 「SM-3」迎撃ミサイルの試験は「Block 1A」、改良型の「Block IB」、それに「Block IIA」で行われてきた。 飛来する模擬弾頭を大気圏外で捕捉・撃破する試験で、捕捉・追尾には自身のレーダーだけでなく、センサー・ネットワークを使い、友軍の早期警戒機などの情報を利用し模擬中距離弾道ミサイルの迎撃を行なった。 このプログラムでは我が海自のイージス艦からの複数回の発射試験を含め、合計で30回以上の迎撃に成功している。 「SM-3 Block 1A」はこれまでに日米両海軍に250基以上が納入済み。 この情報を基に[SM-3 Block IIA]を発射、目標を大気圏外で撃破した。 図5: Raytheon 「Raytheon Home」の図を改定したもの。 「SM-3 Block IIA」は中長距離弾道ミサイル迎撃用で、日米共同 レイセオン[Raytheon]と三菱重工 で開発している。 三菱重工が「ノーズコーン」、「3段目ロケット」、「段結合部」、「2段目ロケット」、「姿勢制御部」を担当している。 「SM-3 Block IAおよびIB」の直径は13. 5 inch 34 cm に対し「SM-3 Block IIA」は21 inch 53 cm になり、速度、迎撃範囲が広がり、KW弾頭も大型化され新型センサーが搭載され、追尾能力が向上、中距離弾道ミサイルへの対応能力が高まる。 ここが最後の迎撃チャンスで、僅かの誤差も許されず、高い精度で行われなくてはいけない。 「PAC-3」には、迎撃高度を20 km以上に延ばし、防空可能な面積を2倍以上に拡げた「PAC-3 MSE」 Missile Segment Enhancement に更新する計画が2019年度から始まっている。 図6:「ペトリオット」対空ミサイルの比較表。 [PAC-3 MSE]は直径が[PAC-3]より太く、迎撃高度・射程が向上している。 我国の弾道ミサイル防衛システム BMDS 我国の「BMDS」については図1を参照されたい。 これを「自動警戒管制システム(JADGE)」で連携実施する構想だ。 「BMDS」の運用は、空自航空総隊司令官の指揮下に「BMD統合任務部隊」を置き、「JADGE」などを通じて一元的な戦術指導を行う態勢になっている。 図7:(平成30年版防衛白書)我国の弾道ミサイル防衛を示すイメージ図。 イージス艦定係港は横須賀、舞鶴、佐世保の3箇所、8隻が揃うと呉を含む4港に2隻ずつ配備が可能。 空自[FPS-5]レーダーは三菱電機製で、中・長距離用弾道ミサイルの探知・追跡用、高さ34 mの3角柱建屋 回転可能 の1面に直径18 mのL, Sバンドのアンテナと、他の2面に直径12 mのLバンドアンテナを装備する。 配備は大湊、佐渡、下甑島、与座岳の4箇所。 探知距離は数千km に達する。 空自[FPS-3改]レーダーも三菱電機製で、Xバンドアンテナをドーム内で回転させ、600 km以上の範囲を監視する中距離用レーダー。 配備は北から当別、加茂、大滝根山、輪島、経ヶ崎、笠取山、背振山の7箇所。 低層域での迎撃を担当する空自高射群は、[SM-3]の迎撃をくぐり抜け「ターミナル域」に侵入したミサイル弾頭を高度15 km以上で迎撃、直径20 km以上の範囲を破壊から守る役目を担う。 北から千歳第3高射群、三沢第6高射群、入間第1高射群、岐阜第4高射群、春日第2高射群、那覇第5高射群、の6個所に配備されている。 各高射群は4個高射隊で構成されている。 例えば第1高射群であれば、高射隊は習志野、武山、霞ヶ浦、入間に配置され、非常時には習志野第1高射隊の一部が市ヶ谷に進出、首都防衛に当たる。 各高射隊はランチャー launcher 5両で編成、各ランチャーは[PAC-3 MSE]なら12発を搭載する。 こうして24高射隊120両ランチャーで全国の基地、発電所、空港、都市などの下層域防空を担当する、しかし配備数が少ないので下層域の防空体制は不十分。 これを補完するには上層域の防空体制を一層完全なもにする必要があり、そのためにもイージス艦の増勢とイージス・アショアの配備が不可欠である。 新型イージス艦「はぐろ」の進水 海自の新型イージス艦が7月17日に横浜のジャパン・マリン・ユナイテッド社 JMU の磯子工場で 進水式を行い「羽黒」[DDG 180]と命名された。 「はぐろ」の完成・就役は2021年3月の予定。 これで海自のイージス艦は1993年に就役した「こんごう」を含め8隻体制となる。 (注)「共同交戦能力 CEC 」とは、射撃指揮に使える高精度の情報をリアルタイムで共有し、全体で共同して対処・交戦するシステムのこと。 レイセオンが米海軍から受注、開発している。 類似のシステムに「戦術データ・リンク」[Link 16]システムがあるが、これは空自のE-2C早期警戒機、E-767早期警戒管制機、F-15J戦闘機(改修済み)、ペトリオットPAC-3、JADGEシステム、さらに海自イージス艦「こんごう」級などに装備済みである。 「共同交戦能力 CEC 」は、この[Link 16]よりずっと高速の「データ・リンク」で、その運用のための戦術情報処理装置が必要となる。 防衛省では2019年12月から導入する早期警戒機[E-2D]にも CEC を搭載する。 「はぐろ」は全長170 m、幅21 m、基準排水量8,200 ton、最大速力30 Kt+、推進機関はガスタービン、低速時にはガスタービン駆動の発電機・電力を使う電気推進方式で航行する。 乗員は約300名、建造費は約1,700億円。 8隻体制が完成すれば、4つの護衛隊群に2隻ずつ配備が可能となり、常時2隻のイージス艦を弾道ミサイル防衛「BMD」任務に充てることができる。 イージス艦の任務は「BMD」だけでなく、本来の役目は大型艦 空母「いずも」など を含む僚艦防空や対潜攻撃など多くある。 米海軍はイージス艦としてタイコンデロガ級巡洋艦とアーレイバーク級駆逐艦合わせて80隻以上を保有中で、そのうち「BMD」改修を付与したのは2018年で38隻で、2019年末には41隻になる。 これを太平洋と大西洋に分けて配備している。 「まや」級の2隻は海自イージス艦の中の最新型。 搭載する「SM-3 Block IIA」は現在配備中の「SM-3 Block IA」の2倍以上の射程を持つので、中国、ロシアの奥地から飛来する弾道ミサイルを容易に撃破できる。 「共同交戦能力 CEC 」で敵弾道ミサイルに対応するのは、いわば「複数の目」で敵ミサイルの動きを知ることになるので確度が高くなり、迎撃時間に余裕ができる。 図8: 世界の艦船2016年1月号掲載の図に加筆作成 「まや」級イージス艦の概要。 基準排水量は「あたご」級より500 ton、「こんごう」級より1,000 ton増えている。 また全長もそれぞれ 5 m、9 m長くなっている。 図9:(海上自衛隊)BMD 5. 0改修が終わった「あたご」。 敵弾道ミサイルを成層圏で迎撃する[SM-3 Block IIA]の発射能力を持つ。 図10:海自イージス艦8隻の一覧表。 6」は[SM-3 Block 1A]および[Block 1B]の発射能力がある。 「あたご」級2隻の「BMD 5. 0」および「まや」級2隻の「BMD 5. 1」は[SM-3 Block IIA]の発射能力を持つ。 「こんごう」級4隻を「あたご」、「まや」と同レベルにする改修は計画されていない。 一方我国にとっての最大の脅威は、中国が増強する[DF-21]中距離弾道ミサイル、射程は日本全域を狙える2,000 km、弾頭には500 k ton核弾頭を装備、2段式固体燃料ロケットで車載型、発射準備には10-15分程度しかかからない。 もう一つは今年1月に中国北西部から数発を南支那海に向けて試射したと伝えられる射程距離3,000 km を超える[DF-26]弾道ミサイル、こちらはグアムなどをその射程に収め、航行中の空母攻撃が可能な精密誘導が行える。 中国政府高官は2016年10月に「微博」上に保有するミサイル数を公表した。 それによると[DF21]、]DF-26]などの中距離弾道ミサイル300発、長距離弾道ミサイル200発、射程1,000 km程度の短距離弾道ミサイルを1,150発、射程数100 kmの巡航ミサイルを3,000発保有するという。 これは、我国の軍事基地、港湾、都市、電力施設などに対し、反撃能力を上回る「飽和攻撃」を加えるのに十分な規模と銘記すべき。 イージス艦のさらなる増勢、「イージス・アショア」の1日も早い設置が望まれる理由はここにある。 ところが一部マスコミは設置計画に瑕疵があるとして反対を煽っている。 これは中国に与する利敵行為に他ならない。 COM Oct 29.

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